富山のガラスの発端は、300年以上の歴史を持つ薬売り文化に由来します。明治・大正期にはガラス製の薬びんの製造が盛んになり、戦前には富山駅周辺を中心に10社以上のガラス工場が存在していたと言われています。
こうした「くすりの街」としての背景を受け、現在も富山ではガラスの街づくりが続けられています。
2019年、WRAPは東京都から富山県へ拠点を移しました。せっかくこの地でものづくりをするならば、地域に根付く技術や文化を洋服に落とし込みたいと考え、ガラスアーティストの古井 万士 氏にオリジナルのガラスボタン製作を依頼しました。
今回製作した“Incomplete Jacket”は、「不完全」をテーマにしています。不完全であるからこそ生まれる余白や、その中に宿る個性に着目しデザインしました。
使用しているのは、カラフルなネップが織り込まれた繊細で上品な光沢を持つ桐生織物。ラフで未完成な印象のジャケットと、美しく整った生地という対照的な要素をあえて同居させています。
そのバランスを成立させるために必要だったのが、“整いすぎない”ボタンでした。
初めてのガラスボタン製作ということもあり、何度も試作を重ねながら、一点一点すべて手作業で仕上げていただいています。
不完全であることが、この一着をかたちづくっています。